第3話 「史上最大の購入作戦」
本体が安くなっても、レンズが通常価格じゃ買いたくねぇ!
脳内の抵抗勢力がD1X購入決議案をなんとか廃案に持ち込もうと、猛反対を繰り広げます。D1X購入委員会が審議の混迷を続けるさなか、メールボックスにこんな怪文書が舞い込みました。
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お買得情報
■年末新品大セール開催!!
・NIKON AF-VR80-400 F4.5D
新品 通常価格\155,000が \149,000-.
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おいおいおい、F4.5DじゃなくてF4.5〜5.6Dだろ? というツッコミはさておき、通常価格でも知ってる限り最安値。それなのに、さらに値引きですか。ヨドバシとの差額は、実に3万円以上。15%のポイント還元を計算に入れても、まだまだアドバンテージがあります。だいたい数寄屋橋交差点にある店の中古価格でも、こんなに安くなかったはずですよ。
ナンというタイミングの良さだ……。レンズも、自分的にお買い得感のあるプライスで調達できることが確定ーッ!! これは、もう天が買えと言っているのに違いない。
翌日、氏名に住所、クレジットカードの番号まで入力して、あとは購入ボタンを押すだけになった状態のパソコンを前に、固まっている自分がいた。
今日購入手続きをすれば、冬休み中新しいデジカメで楽しみまくれる。逆に今日を逃せば、年内の到着は難しい。新年は宅配便の会社も混乱しているから、「到着は休み明け」とかいう買った意味ナッシングなことになってしまう確率が飛躍的に高まります。
買うなら、もう今この瞬間しかない。でもでも、やはりこれだけの超高額買い物には、ためらいがあるのが否定できません。
購入を肯定する気持ちと否定する気持ちの両方が、アタマの中でグルグルまわります。もう、ワケわかりません。意識が朦朧としてきました。ダメだ、とりあえずメシでも食ってこよう。席を立とうとしたその瞬間、衝動的に「購入」をクリックしていました。
「ありゃ?」
なんだか、頭がぼうっとして、正常な思考能力を失った状態。よく冗談として言われる「気絶する」という言葉のままでした。いやぁ、高額の製品を購入する時に、意識を失うってのは本当のコトだったんですね。
あれほど欲しかったモノを、ついに購入! ……したというのに、沸き上がった感情は「あーあ。とうとう、取り返しがつかないところに、足を踏み入れてしまった」。という、ヨロコビとはまったく違うモノでした。ついにやってもーた! 嫁にどう言い訳しよう。それより、この代金をいったいどうやって工面するべきか……。
クリックしてから、怒濤のように押し寄せる後悔の念。しかし、もう後には引けません。仕事を終え、帰宅。
夕飯のとき、嫁に「実は……」と切り出すと、それだけで「買っちゃったの〜!?」とすべてを見透かされてしまいました。
「そ、そのとおりでございます〜。なにとぞ、なにとぞお許しを〜〜」
土下座する私。その上には、嫁がひっくり返したテーブルから皿や茶碗や今晩のおかずが降りそそぎました。
本体とレンズの購入代金、総額60万7950円(D1X:43万円+TAX VR:14万9000円+TAX)。これまでの人生の中で、クルマの次に高額の買い物です。次のカード引き落とし日が来たら、夜逃げするほかないかもしれません。
そんなわけで、D1Xとの新しい日々が始まりました。
……もう最高です。詳しくは別のページにまとめますが、購入に一片の悔いもありません。とりあえず、今は新しい機材に慣れるべく、シャッターを切りまくっています。
さてさて、D1Xを買ってからというもの嫁と私の間には、ある変化が起こりました。それは嫁がこれまでにない厳しさで、私の物欲をマークするようになったことです。
「こんな製品があるんだ」と、ちょこっとクチにするだけで「それ、いくらなの!? ダメ〜〜っ!!!」。特にカメラ関係の品物は、「コレ欲しいな」と思うことすら、許してもらえません。ビックカメラのレンズ売り場前など通ろうものなら、本気で体当たりされて売り場から強制的に退去させられます。
年末に親族から1万円分のVISA商品券をもらったので、「この商品券の額の範囲で一脚でも買うか」という提案ですら「ダメ!」と、一蹴です。
私、これから数年間、1000円を超える買い物はできないかもしれません……。