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 △pixelbirds


 



トロピカ〜ル スコープ買〜う
カワセミの写真をゲットしたウキウキを抱きつつ眠りにつくと、翌日はもう仕事に忙殺される日々である。が、それは今までの毎日と確実に違っていた。そう、私はカワセミを見たことがある、「カワセミ後」の自分である。もはや「カワセミ前」の自分とは異なる人間だといっても過言ではないのだ。

ピンぼけだしちっこいし、ろくなデータではない。でも生まれて初めて見て、撮った、カワセミである。会社のパソコンの壁紙にするのはもちろん、ことあるごとにデータを鑑賞しまくった。わーいわーい。いやぁ、カワセミって、本当にかわいいねぇ。

だがしかし、そんなカワセミ写真を見れば見るほど、「画面の片隅に、ちんまりとしか写っていない」という事実だけが際立ってくるのであった。

憎い! あの青い鳥が憎い! カワイイ顔してるクセしやがって、池の向こう側とか真ん中の止まり木にしか現れず、Ultra Zoomでどんなにがんばっても、110ピクセルぐらいにしか写りやがらない。こっち来てオレの目の前の枝に留まれっつーの! そして、Ultra Zoomの液晶ファインダーいっぱいにその姿を晒しやがれ!!

……と、野生生物に無茶な注文をしたところで、それに応じてくれるカワセミなど存在するはずもない。再びその場所に向かったところで、また悲しい思いをするだけなのは自明だ。くっそ〜〜。

どうにかしてヤツの画像をゲットしてやりたいが、光学17倍ですら役に立たないあの距離。これ以上を望むなら、撮影機材の更新が必要だ。とはいえ、さすがにバズーカのおっちゃんたちが持っていたような巨大望遠レンズは、ウチのデミオが新車で買えちゃうぐらいの値段であり、貧乏人の感覚では一戸建て住宅とかマンションと同じ価格帯に存在する品物なのである。

だいたい鳥を撮るって言うのは、新しく買った10倍ズームのデジカメを使って楽しむための手段に過ぎなかったはずだ。それなのに、鳥を撮る目的で新しいカメラだのレンズだのが欲しくなってる今の自分は、完全に目的と手段が逆になっている。

そんな自分に、自分で怒りを爆発させようとしたとき、ふと東京港野鳥公園でフィールドスコープにデジカメをくっつけている人がいたことを思い出した。

これだ!

さっそく情報収集に入る。googleの検索キーワードに、「フィールドスコープ」と「デジカメ」を入力してリターン。おお、望遠鏡にカメラをくっつける取り方を「コリメート法」というのか。ふむふむ。次に「フィールドスコープ」について調べると、ビクセンというメーカーだけがデジカメ用の汎用アダプタを発売していることも判明した。

そして翌日、早速ビックカメラに行ってフィールドスコープのカタログをゲット。いろいろなメーカーのカタログを見比べてみた。

デジカメ用のアダプタを発売しているのは、やはりビクセンしかないようだ。他に選択肢はない。

ビクセン〜? なんか聞いたことナイ名前だなぁ。性能的には大丈夫なのか? でも、ニコンのスコープでも使ってる「EDレンズ」のモデルもラインナップされてるし、なにより値段が断然安い。EDレンズの80ミリでも、ビックカメラ価格なら6万9000円。これならナンとかならないでもない。というか、これ以上はどうしようもならん。もう、スコープはビクセンで決まりだな。

とはいえ光学機器なんて、まったく未知のジャンル。5桁万円の超高額商品なんだから、買う前には専門家の話を聞いてみるのが、賢い消費者の行動といえよう。そんなわけで、今度はインターネットで見つけた秋葉原の望遠鏡専門店、協栄産業に向かうことにした。

金曜日、仕事を必要以上に早めに切り上げて、電脳物欲都市秋葉原に到着。万世橋を渡り、子供の頃によく行った交通博物館のすぐ近くを通ると、そこに協栄産業東京店はひっそりと佇んでいた。

入口から店内に入る。そこは海外製のフィールドスコープをはじめ、双眼鏡だの天体望遠鏡だのが並ぶ、今までまったく縁のなかった空間である。が、店頭に並ぶそれらがロクでもない高額商品であり、禍々しい物欲光線をちりちりと放射しているのは全身に感じられる。

スタッフの方にデジカメとスコープで鳥を撮ろうと考えていることを伝え、実際にアダプタを見せてもらう。ふーむ、なるほど納得。こうやって取り付けるのか……。感心しながら見ていると、「ニコンやコーワのスコープにデジカメが付けられるアダプタを、協栄産業では独自に作って売っている」ということを教えられた。

ありゃ。そうなんだ。他社製にはデジカメアダプタがないから、「スコープはビクセン! 決定!」と思っていたら、選択肢が一気に拡がってしまった。そういえば、野鳥公園にはNIKONのスコープばっかり揃ってたなぁ。KOWAっていうメーカーは知らないけど、「プロミナー」っていう商標は聞いたことがあるぞ……。などなど、思い出さなくてもいいようなことばかり思い出す。

と、とりあえず見積もりだけもらって帰ることにしよう。しばらく待つ。ほどなくして、見積書ができあがってきた。受け取って金額欄を見る。

どかーん!!!
な、なんじゃこりゃぁああああ!!!

そこには、実に恐るべき数値が並んでいた。だいたい、スコープがビックなら6万強で買えてポイントまで付くというのに、ここでプロミナーなんて買った日にゃあ、本体だけで10万円コース。冗談じゃあーりません。

鳥を見るのは、始めてまだ3カ月の趣味。自分の性格からして、すぐ飽きちゃうかもしれない可能性バリバリなのに、そんな投資をしていいのか? イイわけない。そもそも、預金残高が既に無いところから、かろうじて支払いに回すカネをひねり出そうとしているのだ。そのうえ、さらに予算オーバーなんてトンでもない!!

それなのに、なぜだ、なぜだ? 
「プロミナーが欲しいイイ〜。ビクセンじゃイヤだあああ〜」という心理が、どんどん確固たるモノになってしまっている。

そう、私はすでに専門家のみが語れる濃いトークによって、すっかり洗脳を完了されてしまっていたのだ。

「そうかぁ〜、そうだよねぇ〜。やっぱ見る人が見ると、イイものってわかるんだよねぇ〜。ツウはプロミナーだよねぇ〜」という思考しかできなくなっていく自分。それは、「専門家から情報を得て、正しい選択をしようとする賢い消費者」ではなく、ゴイサギが口を開けて待っているところに自分から飛び込んでいく鴨川の鮎のような、格好の捕食対象でしかなかったのである。

翌日、私の手には10万円のプロミナーをはじめ、接眼レンズに三脚、デジカメアダプタ(COOLPIX用)など、スコープ関係一式の入った袋が握られていた。

そんなわけで、これだけ購入してしまいましたとさ。

KOWAプロミナー TSN-664
接眼レンズ 30倍ワイド(後日、20倍も買いました)
三脚 ベルボンSX-601B
ケース プロミナー660シリーズ用
デジカメアダプタ KYOEIオリジナルCOOLPIX用

COOLPIX995
予備バッテリー
リモートケーブル
レキサー128MB CF
CFカードアダプタ

私の預金通帳の数字には、新たに23万円が加わった。もちろん、赤い数字で……。


 
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