| 私の勤めている会社が入っているビルは、1階にパソコン屋がある。近辺では最大級の規模で、品揃えも割と豊富。価格設定が少々高めという難はあるが、その立地はあまりにも凶悪だ。
会社から出かけたり帰ってきたりするたびに、店の前を通ってしまう。そうなるとブラックバスが眼の前のスピナーベイトに喰いつくのと同様、脊髄反射的に店内へ足が向いてしまうのだ。最新のデジカメやノートパソコンや周辺機器が、わたしの財布からカネを抜き取るべく、物欲ビームを放射する。毎日毎日が物欲との戦いの繰り返しであり、それは「欲しいけど、カネが無いから買えない」いう悲しい現実を思い知らされ続ける日々でもあるのだった。はあ(ため息)。
さて、そんな会社の1階にあるパソコン屋が、店内を改装することになった。改装には「在庫処理セール」がお約束である。店内全品20%オフという凶悪なPOPによって、通常の20倍増しぐらいになっている物欲ビームを全身に浴びながら売り場をさまようハメになってしまった。わき上がる物欲衝動。これ以上ここにいると、いい加減ヤバイ。そんなことを惚けた頭で考えていたその時、「オリンパスC-2100
Ultra Zoom」がヤフオクでそのまま転売しても儲かっちゃうぐらいの爆安価格で売られているのを見つけてしまったのだ。
光学10倍ズームレンズと、手ぶれ防止機能を搭載した超望遠デジカメ「オリンパスC-2100
Ultra Zoom」。それは、軒並み10万円以上という天文学的な高額で販売されている(当時)、私にとってエベレストの山頂に咲く高嶺の花である。購入なんて、検討すらしなかった。だがしかし、エベレストの山頂にあると思っていたその花が、富士山5合目ぐらいに咲いているという現実が今ここにあるのだ。はうっ!
私の脳内に住む物欲の獣は、身体にまとわりついた理性という鎖を粉々に引きちぎり、その咆哮を高らかに轟かせるのであった。
ほ、欲しいーッ! 欲しすぎるーッ!! 買いてぇーッ!!
とはいえ、「欲しいから買う」という衝動を行動に移すには、経済力があまりに不足しているというのも偽らざる現実である。さらに、デジカメならほんの数カ月前に、C-2000
Zoomを購入したばかりではないか。
「え〜!? また買うの〜!? この前買ったばっかりでしょ〜」
欲しいという心の叫びをかき消すかのような、嫁のブーたれ声が脳内にこだまし、わずかに正気を取り戻した。そう、別にC-2000 Zoomに明確な不満があるわけではない。むしろ、満足している。Ultra
Zoomを買わなくても、なにも困りはしないのだ。今日は我慢して家に帰れば、明日見に来た時にはもう売り切れ。スッパリ諦められるに違いない。
だいたい、極貧人の自分がいま持っているアイテムを、もう一台衝動買いするなんて許されざる贅沢行為にほかならないじゃないか。
自制心が物欲の獣を取り押さえることに成功、なんとかそのまま家に帰った。ほっとひと安心。
さてさて翌日、今日も今日とてパソコン屋に寄ったついでに会社に行くと、じゃない、会社に行ったついでにパソコン屋に寄ると、デジカメ売り場にはこんな張り紙が。
「C-2100 Ultra Zoom 残り2台!」
私はすぐさまパソコン屋を後にして、デスクに戻った。
手にC-2100 Ultra Zoomの入った重い袋と、クレジットカードの利用票をぶら下げて。
ああ……。や、やってもうた〜!!!
嫁の文句攻撃に土下座でなんとか対抗し、今まで使っていたC-2000
Zoomをヤフオクで売却(いい人に買ってもらえて、とてもハッピーな思いをしました)。こうして、私のデジカメは、C-2100 Ultra
Zoomになったのであった。
|